花嫁は婚約者X(エックス)の顔を知らない
「筆談ってどういうことだよ!」

真宮くんの声が大きくなったのでとっさに口を押さえた。

「しーっ!大きな声出さないで!」

制服のネクタイを引っ張り真宮くんの耳を自分に近づけてコッソリ伝えた。
そして、ノートを開いて筆談を始めた。

『私、盗聴されてるんじゃないかと思ってるの。』

真宮くんが驚いている。

『誰に盗聴されているか心当たりはある?』

『私の婚約者。』

「はぁーっ!?お前、そんなわけ…」

また大きな声を出すので真宮くんの口を手で塞ぎ、人差し指を立てて『静かに』のポーズをとると、私からペンを受け取り真宮くんがノートに書き始める。

『何でそう思った?』

『私と婚約者は面識がないのに、この学校に入学してから私の気持ちとかが伝わり過ぎてると思うの。クリスマスの日の事覚えてる?真宮くんに彼は私と結婚することしか考えてない。彼には私への想いがないって不安に思って話したら、今月届いたカードには「いつも君を想っている」って書かれてたの!』

『それで盗聴されてるって思ったのか?』

『そう。なんか、あの時の会話を聞かれていたんじゃないかって思って。他に思いつかなった。』

「ぷっ…。」

さっきまで不機嫌になっていた真宮くんだったが面白そうにペンを進める。

『で?俺にどうして欲しいの?』

『咲良さんに相談したら、真宮くんならいい方法思いつくはずって!』

『わかった。まずは盗聴器を見つける機械を用意するよ。』

『ありがとう!さすが天才くん!』

「『天才くん』は止めろっ。」

話が終わったのでノートを閉じ、使っていたペンをペンケースにしまった。
2人で階段を降りていると階段の下で咲良さんと柳くんが心配そうに待っていてくれた。
どうやら柳くんには咲良さんから話をしてくれた様だった。

2月に入ると盗聴器を見つける機械が揃ったと真宮くんからメモが回ってきた。放課後になると真宮くん、咲良さん、柳くんの4人でその機会を使って教室に仕掛けられていないかチェックをしたが特別反応はなかった。

念のため真宮くんから生徒会長に連絡してもらい、生徒会室も確認をしたがこちらも特別反応はなかった。

「残る場所は一つですわね!!」

「咲良さん、本当にやるの…?」

「あの部屋をチェックしなくて他にどこをやれと仰るの??」

「ならぁ…。」

私と咲良さんは同時に真宮くんを見た。

「へっ??なんだよっ!嫌な予感しかしねーぞっ!」

「咲良から聞いて演劇部から借りてきたよ。俺は留守番してるからあとで結果をアプリに送って~。」

「分かりましたわ柳くん。寮でのチェックが終わったらメッセージ送りますわね!」

私と咲良さんは柳くんが演劇部から借りてきたカツラをかぶせ女の子に見えるようにお化粧をした。
会長は入学説明会などで使用する女子生徒用の制服のサンプルを持ってきてくれた。

「琴乃ちゃん、これでいいかな?大き目のサイズを選んできたんだけど…。」

「会長!ありがとうございます。」

大き目のサイズとはいえ身長が高い真宮くんが着ると超がつくミニスカートになった。

「まるでギャルですわね。」

「…うるせぇ。」

「女子寮に男子生徒は入れないから仕方ないよね…」
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