花嫁は婚約者X(エックス)の顔を知らない
聖麗学園の女子寮は学校に関連する女性のみ入館が許されている。
あらかじめ入館については申請が必要なので、深雪さんの名前と生徒番号で提出をしておいた。
見た目ギャルになってしまった真宮くんは大和なでしこを思わせる清楚な深雪さんとは真逆な印象なので他の人に見つからない様に移動し、こっそり白百合館の中へ入る。
エレベーターで3階の302号室へ向かうと部屋の前に寮母の太田さんがいた。

「あら、今日はお友達がきているのね。あまり騒ぎ過ぎないでね、他の部屋から苦情が入ると面倒だから。」

「はい、わかりました。」

愛想よく返事をし、真宮くんを隠しながら部屋の鍵をあける。

「ちょっと、あなた達?」

「ふぁい!」

ドキッとして声が裏返ってしまった。

「飲み物はどうする?自分たちで取りに来る?それとも用意した方がいいのかしら?」

「のっ、飲み物ですか?咲良さんの紅茶があるので大丈夫です!」

「あら、そ~ぉ?」

「えぇ!実家から美味しい茶葉が送られてきましたの。ですから用意していただかなくても大丈夫ですわ!」

「分かったわ。何かあれば下にいるから教えてね。」

というと太田さんはエレベータに乗り込み下の階へと降りて行った。
今がチャンスと急いで部屋に駆け込んだ。

「何でここに太田さんがいるの~!普段いないのにぃ~~!めちゃくちゃ緊張した!」

「緊張したのは俺の方だ!こんな姿絶対に見られたくない!」

「あら。ミス聖麗学園が何をおっしゃっているの?」

「あっ、あれは仕方なくだ!」

「さぁ、始めますわよ!」

真宮くんは機械を取りだし盗聴器を探し始める。
私側のスペースには婚約者から届いたブーケをすべてドライフラワーにして飾っていた。
壁に掛けられたドライフラワーを真宮くんは嬉しそうに見ていた。

 花が好きなのかなぁ??

「反応がないですわね…。」

「始めっから盗聴なんてされてねぇーんだよ。」

「じゃあ、今までの贈り物とメッセージは本当に偶然だったの??」

「そーゆーことだなっ!念のためパソコンも見てやるよ。」

真宮くんは私と咲良さんとラップトップを開いて余計なソフトがインストールされていないかスキャンしてくれたが、こちらも何ともなかった。

「ちゃんとお前の事を考えながら贈り物とメッセージ用意してるって事だな!良かったんじゃねーか?」

私の頭をわしゃわしゃと撫でながら微笑んできた。

「柳くんに何もなかったってメッセージしておきますわ!」

 本当にこれで良かったのだろうか?

今回は私の勘違いという事で終わった。
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