花嫁は婚約者X(エックス)の顔を知らない
学校が始まり最初の1週間はオリエンテーションがほとんどだったので、午前中のみで学校は終わった。
来週から通常授業になるというので、咲良さんのクラスのホームルームが終わると放課後みんなで遊びに行くことにした。
どうせなら今しかできないことをやりたいね!と咲良さんが言いだし、みんなでお花見に行くことになったのだが…。
さすがセレブのご令息、ご令嬢が集まる聖麗学園。リムジンを呼んで桜で有名なホテルへ向かうことになったのだ。初めて乗るリムジンに緊張して言葉がでず固まっている私と違ってみんな乗りなれているのか、冷蔵庫を開けて飲み物を出したり各々リラックスしていた。みんな適当に好きな席に座ったのだが、真宮くんと古賀くんに挟まれる位置に座ってしまった。

「…ああ、ではそれでお願い。」

なれた口調で柳くんは電話を終わらす。

「修治、どうだった?」

「平日だからホテルも忙しくないみたいだ。俺らがつく頃には全部用意できてるようにするって。」

「良かった。修作(しゅうさく)にお礼言っといて!」

 …誰だろう?

修作という人物が誰なのかわからずにキョトンとしていると咲良さんが柳くんの兄だと教えてくれた。そして、今から行くホテルのオーナーをしているそうだ。

「今から行くホテルって5つ星で有名なグランドクイーンホテルだよね?柳くんのお兄さんってそんなにすごい人なんだ!」

「お前知らねーの?修治の親父はグランドクイーングループの代表だぞ。」

真宮くんがドヤ顔で言ってきた。

「えっ!?柳くんってめちゃくちゃお坊ちゃまだったのっ!!!」

「別に隠してるわけじゃないけど、俺、次男だし別に跡取りって訳でもないからね~。別にあえていう事でもないし…。」

「お金持ちなのにめちゃくちゃ謙虚!柳くん、人間出来過ぎだよ~!」

「そんなこと言ったら晴翔だってスピカグループの御曹司だよ。もしかして知らなかった?」

「えーー!スピカグループなの!?私のお父さんもスピカ系列の会社の社員だよー!」 

「父親が大切なら俺を敬え!はっはっはっ!」

「ちょっと、柳くんの謙虚さを見習いなさいよっ!」

「真宮くん、それはパワハラですよぉ~~!」

「琴乃!いざって時は僕が弁護士探してあげるからね!」

牧野さんの突っ込みに古賀くんが乗っかると車内で笑いが起きた。

「晴翔自身はスピカのコンサル系やIT系の子会社のCEOをやってるんだ。琴乃ちゃんもしかしてそれも知らなかった?」

「うん、まったく知らなった…。」

知り合って半年になるが初めて知った彼らのセレブな環境に鳥肌が立った。
 
 本当にこんなセレブっているんだ…。

そもそも三人が幼馴染なのはスピカとグランドクイーンが共同で都市開発を行った際に打ち合わせなどで使用していた料亭が咲良さんのご実家で、みな同じ年齢の子供がいるのであれば一度会わせてみようという話になったそうだ。実際に集まってみると、子どもたちよりも母親同士が仲良くなり頻繁に子どもも連れて一緒に遊ぶようになったそうだ。
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