花嫁は婚約者X(エックス)の顔を知らない
真宮くんは私の方を見るといつもの悪態をついてきた。

「俺が選んだ方が良かったみたいだなっ。センスがない。」

「えぇ〜!真宮くんひどぉーい!私がコーデしたんですよぉ〜。」

「えっ!?コイツが選んだんじゃねぇーの?悪い!牧野!!今のは冗談!」

私をからかおうと思っての発言だったらしく真宮くんにしては珍しく慌てて一生懸命牧野さんに謝っていた。本当に申し訳ないと思っているならと、追加でバッグをもう一つおねだりしていた。

「…女子って怖ぇ。」

そのやりとりを見た古賀くんが怯えていた。
男子3人とも身長が高くジャンルは違うが、みなモテ顔なのでそのままここのブランドモデルになれるのではないかといった感じだった。おそらくこの3人はどんなにダサい格好をしても着こなしてしまうのだろう。
準備も整ったので支払いを済ませ車に乗り込んだ。これだけの金額の支払いをジュースを誰が奢るかを決めるかのように3人でジャンケンしていた。CEOの真宮くんで無くとも他の2人もこれだけの金額を支払えるカードを持っているという事だ。ジャンケンには古賀くんが負けたのだが、牧野さんへの謝罪バッグは真宮くんがキチンと支払っていた。

「お前ももう一つバッグ欲しかった?」

隣に座った真宮くんに聞かれた。

「今日の服装に合わせて一つ買ってもらってるし、たくさんあり過ぎても寮にはしまう場所もないから…。要らないかなぁ〜。」

「それ、古賀が支払ったじゃん、俺からは、まだ買ってやってないから今度買ってやってもイイぜ。」

何でいつも上からなのだろう。こんな俺様なCEOで社員は付いてくるのだろうか。

「…買ってもらわなくていいよ。」

何となく借りを作りたくなくキッパリと断った。

「おっ、俺が買ってやっても良いって言ってるんだから今度一緒に買いに行くぞ。この話は終わりだ。」

「はっ!?要らないって言ってるじゃん!」

「この話は終わりだって言っただろ?」

このやりとりを見て柳くんがクスクスと笑っていた。

「真宮、僕には隠せないよ。お前、僕にやきもち焼いてんだろ。」

「ヤキモチ?何で?」

「お前らうるさい。ほら、ホテルついたから降りるぞ。」

何で古賀くんにやきもちなんて焼いているのだろう?ジャンケンに勝ったのに?全員分の支払いをすることでお金持ちのマウントでも取りたかったのだろうか??だったら初めからジャンケンなんてしなければ良いのに…。
私にはよくわからなかった。

車が停車するとドアマンが近づいてきてリムジンのドアを開けてくれた。先に男子が降りると車から降りやすいように手を取ってくれた。柳くんは咲良さんを、古賀くんは深雪さんと牧野さんを、そして真宮くんは私をホテルの中へとエスコートしてくれた。普段、学校にいると普通の男子高校生の様に感じるが、この様な躾がきちんとされているのは聖麗学園の生徒ならではなのだろう。
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