花嫁は婚約者X(エックス)の顔を知らない
「‥と言う訳で3人でお揃いの水着とパジャマを買いに行くことになったんだ!」

寮に戻るとホームルームの時間に6月の修学旅行でのグループ分けをした話を咲良さんにした。

「お揃いの水着とパジャマ、羨ましいですわっ!」

「咲良さんもお揃いにする??」

「いいえ、今回は諦めますわ。お揃いにしたところでクラスが違うからお揃い感を味わえないですもの…。」

しょんぼり寂しそうにしていた。

「それにしても真宮くんがいくらでもお金を出すなんて…。私はそちらの方が驚きましたわっ!」

「私も含め、皆んな呆れた顔してたよ。」

「昔の真宮くんは無表情で頭の回転だけが早くて、ロボットみたいでしたのよ!お金や見た目でやってくる女子生徒なんて完全に無視されてましたし…。」

「えっ!?」

「真宮くんのお父様がどんなに頭が良くても、会社のトップとして感情に欠けた人物ではダメだって、アメリカから連れ戻して無理やりこの学園に入学させたのよ。」

「それで2度目の高校生なのね…。」

何となく柳くんからは聞いていたけれど、そういう理由があったのかと改めて知った。。

「初めは仕事が忙しいって、学校はサボりがちだったのに二年生になると突然学校に来るようになってきて、少しずつ柳くんと私には感情を見せ始めたの。何がきっかけになったのかはわからないのだけど…。」

「私が転校してきた時には無表情だなんて印象は無かったけど…。そんなタイプの人だったんだ…。」

私から見た真宮くんの第一印象は最悪だった。見た目はいいが、やたらと文句ばかり言う男子。当時はなるべくならば関わりたくない人物リストに入っていた。しかし、時折見せる優しさや笑顔に惹かれていったのだった。

「そうですわよ!そんな彼が古賀くんに嫉妬したりお花見の日なんて衝動的に琴乃さんを連れ出したりして本当に驚きましたわっ!しかも手をつないで戻ってくるし…。あの日から学校のある日は毎日寮まで迎えに来ているのも驚きですわ!」

お花見の次の日から登下校を共にしている。迎えに来た初日、手をつないで学校へ行こうと真宮くんが言い出したので、一応、婚約者がいる身でさすがにそれは無しだと断った。しかし、『俺なら問題ない。』と相変わらずの王様発言を繰り返している。

 やはり、あの日に間宮くんは壊れてしまったのだろうか…。

どこを取っても合理的では無く感情で動いているように見えた。
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