花嫁は婚約者X(エックス)の顔を知らない
午前中に荷物が届いたようで、学校から戻ると婚約者からの贈り物が届いてた。
まだ、花束についているカードのメッセージすら読んでいないことを思い出し、花束を手に取る。

「琴乃さんの婚約者も律義に毎月贈り物されて偉いですわよね。」

「そうね。贈り物もメッセージも適当ではない気がして。咲良さんの言う様にどこかで面識があるのではないかと考えてるんだけど、さっぱり浮かばないの…。」

一向に考えても候補者が浮かばないのでこちらもじれったくなる。生徒会長が誰かわかったというのだから学校関係者なのだろう。しかし、この学校に入学するまでこの学校とは完全に無縁の生活をしていた。学校関係者として絞り込むのには浅はかな気がした。

『来月の誕生日にはサプライズを贈る。 君の婚約より。』

「…私の誕生日知ってるんだ。」

花束についていたカードを咲良さんに見せた。

「誕生日?琴乃さん、来月お誕生日ですの?」

「そう。5月5日子供の日なの。GW(ゴールデンウイーク)中だからほとんどクラスメイトには知られないんだけどね。」

GW中に誕生日の人あるあるなのだろうが、新学期が始まって直ぐなのでまず皆に誕生日を聞かれず、ぽつぽつ誕生日の友達が現れ始めて夏休み前あたりに『そういえば琴乃ちゃんの誕生日はいつ?』と聞かれその頃にはとっくに誕生日は過ぎており仲良くなった友達から微妙な空気を出されるのだった。
友達から話題にされることは無いし、祝日なので毎年家族でお祝いをしていた。きっと今年も家族で食事に行くのだろうと思っていた。

「GWは実家に戻られるの?」

「うん、実家に戻るつもり。毎年家族で食事に行くの。きっと今年も同じくレストランを予約してくれていると思うから…。」

「なら、GWが終わった皆でお祝いしましょ!」

「ありがとう!」

婚約者からの贈り物を開けるとピンクダイヤモンドで作られた桜のピアスが入っていた。
4月は桜の季節だからこのデザインなのだろうか…。

「また高いものが送られてきたわね。」

「それより私の耳にピアスホールがあいてることを知っていたのがびっくり!」

「イヤリングじゃなくてピアスなのね?」

「うん。」

イヤリングとは違う針の部分を咲良さんに見せた。
高校生に入って両親に黙ってこっそり友人とピアスホールを空けたので両親は知られていないと思っている。
実家でも学校でもピアスを付けていないので、髪の毛で耳も隠れ気付く人はほとんどいない。

「ちょっと怖くなってきた。この人いったい何者なんだろう??やっぱりどこかに盗撮用のカメラが仕込まれている気が…。」

「実はご両親気づいてたのでは?カメラもマイクも以前真宮くんがきっちり調査されたから大丈夫だと思いますわ…。ちなみにですが、ピンクダイヤモンドの宝石言葉は『完全無欠の愛』だそうよ。」
< 98 / 113 >

この作品をシェア

pagetop