シルバーブロンドの王子様が甘すぎる〜海を越えた子守り唄
プロローグ

異国語なのか、言葉の意味はまったくわからない。

でも、とても澄んで綺麗な歌声。

暖かな陽射し。青い海が煌めきぬるんだ潮風のなかで、栗色の毛を靡かせた女性が歌う。
すべらかな手が、わたしの前髪をすいてくれて。わたしは幸せな微睡みに包まれていった。


☆☆☆☆☆☆



「え?」

沢村 くるみ。23歳。今、わたしは2年同棲する彼にとんでもないことを告げられた気がする。

「そこまで頭が悪かったんかよ、おまえ。いいか、もう一度だけ言ってやる。俺は今日からエミリと住む!なんせエミリの腹には子どもがいるんだからなァ」

築10年足らずの瀟洒なデザインのメゾネットアパート。目の前にいる彼…光輝(こうき)くんが、結婚前提でとわたしとの同棲のために、借りてくれた。
月々の家賃と生活費は折半。非正規でしか働けないわたしにはきつかったけど、彼との将来のためと頑張って働いて…コツコツと貯金もしてきた。

それなのに、なぜ光輝くんはわたしを苦々しく睨みつけるんだろう?
なぜ、お腹を大きくした親友のエミリが我が物顔でリビングにいるんだろう?

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