シルバーブロンドの王子様が甘すぎる〜海を越えた子守り唄

だって……外で生活する方にしか見えなかったのに。シャワールームから出てきた彼は、二十代半ばの若者。

しかも、黒かったはずの髪は綺麗なシルバーブロンドで、海のような澄んだブルーアイ。それに似合う整った彫りの深い顔。肌はよく焼けた小麦色…細身に見えて引き締まった身体は背が高くて。
駅前通りで見た人と同一人物とは信じられない。

「あの……だ、大丈夫ですか……?」
「ああ、もう平気だ」

薄い唇から紡がれた声も、かすれたような低い声。なぜだか、お腹にズクンとくる。

「じゃ、じゃあ……わ、わたし…もう行きますね。ごはんはここに置いておきます。ホテル代は払っておきますから……」

わたしのなかで、警戒心が持ち上がる。
イケメンはやたらと自信家で、トラブルしか経験したことがない。

「きみ、名前は?」
「え、あの…く、くるみ…です」

名乗るつもりもなかったのに、なぜか彼の質問に答えてしまっていた。

「…くるみ。それは名前だけだ。フルネームは?」
「さ、沢村…くるみ……」

なぜ、だろう?

彼の命じることに慣れた感じが、わたしの口を自然と開かせた。

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