シルバーブロンドの王子様が甘すぎる〜海を越えた子守り唄
「オレの名前は、三鷹 海(みたか かい)」
「かい…海?」
「そうだ」
かい…カイ…海…。
海のように澄んで深い蒼色を持つ彼に、ぴったりだと思った。
「綺麗な蒼……ですよね…懐かしい海の色……」
ベッドに座り、思わず口ずさんだ。
「イル、タゥート、デマス…アーク、ダ、トールディアルガ……」
懐かしい、ぬるんだ潮風のなか。ぬくもりと優しい手。暖かな陽射し。胸いっぱいに吸い込んだのは、優しい香り。
知ってる童謡のような、民謡のような……柔らかい調べ。
この歌だけは、わたしの唯一の拠り所。
寂しいとき、悲しいとき、つらいとき、苦しいとき。いつもいつも歌っていた。自分を慰め励ましてきた。
知らない言葉。なのに、懐かしくてあたたかい。
子どもを想う親の気持ちが込められてる気がした。
歌い終わったあとにほうっと息を吐く。
「ごめんなさい…下手な歌を…えっ?」
謝罪しようと顔を向けて、びっくりした。
三鷹さんが、いきなりわたしの目の前で跪いたから。
「くるみ、オレの本当の名前は……カイル・ファン・シルカーだ」
「カイル…?シルカー??」
「ああ。そして、ようやく見つけた……赤い瞳に子守り唄……君が、オレの探し求めた姫だ」
そう告げてきた彼は、突然わたしを抱きしめる。
「姫…?なんのことですか…ッ」
唇に感じたのは、暖かく柔らかい感触。
信じられないほどの近さで見えた、整った顔。
彼が、わたしにキスをしたと理解した瞬間、頭が真っ白になった。