シルバーブロンドの王子様が甘すぎる〜海を越えた子守り唄

「あははっ!くるみの下手くそーそれっ!」

マリンがわたしを散々笑ったあとに、餌を手にして思いっきり振りかぶってから投げ……。

なぜか、ポイッと後ろに飛ばした。

「イテッ!」

どうやら、テニスをしていたおじちゃんの頭に命中したらしく…。

「あははっ!マリンも人のこと言えないじゃない?というか、わたしよりひどくない?」
「おかしいなあ…これでも運動神経はいいんだけど?」

わたしがからかうと、マリンは不思議そうな顔で手をにぎにぎしてる。

「こらぁ!誰だあ!?」
「見つかったらヤバい!逃げるぞ!!」

なぜかカイルがわたしの手を掴むと、一気に走り出した。

「ちょっとカイル…きゃっ!」
「走れ、くるみ!」
「ま、待ってよ…わたし、走れないのに…っ」

でも、後ろを振り返ると角を生やしたおじちゃんが走って追いかけてくる。

「カイル、テニスのおじちゃんが追っかけてきてるー!」
「よし、スピードアップするぞ!掴まれ!!」
「きゃあああ!」

しまいにはわたしを半ば抱えるようにして、カイルはテニスおじちゃんから逃げ切った。

そうこうしているうちに、マリンやアベルさんたちとははぐれたみたいで、2人の姿が見えなくなったけど。

梅苑がある広場までやって来てベンチに座ると、カイルとお互いに顔を見合わせてどちらともなく笑いがこみ上げてきて、2人で笑いあった。

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