シルバーブロンドの王子様が甘すぎる〜海を越えた子守り唄
「くるみ、オレの名前は覚えているか?」
唐突に訊かれたから、ホテルで聴いた名前を出す。
「えっ…と…三鷹 海?」
「違う。日本名でなくもう一つの名前だ」
もう一つ?と聞いてどうだったかな…?と頭をひねり思い出した。
「カイル・ファン・シルカー…だったかな?それがどうかしたの?」
「……知らないのか?」
「え、何が?」
カイルが何を言ってるのか、意味がわからない。
「オレの本当の身分を」
「うーん…知らない。どこかいいところの御曹司だよね、少なくとも。あんな立派な御屋敷に住んでるんだもの。でも、カイルはカイルだもんね。わたしの前でボロを着て倒れてたひと」
そう、わたしにはお金持ちや貧乏人とかは意味がない。
わたしにとって大切なのは、身分や地位じゃない。
「……カイルは、わたしには素敵な人だよ。こんなわたしにも優しいもの。最悪なくらい落ちたわたしをこうして笑えるまでにしてくれた。わたしにはなんにも返せるものがないのに……だから、少しでもなにかカイルの役に立ちたいって思うよ」
なんだか照れくさくって、景色を見るふりをしながらそう告げた。