シルバーブロンドの王子様が甘すぎる〜海を越えた子守り唄
(今晩も遅いんだ……)
毎晩、毎晩。カイルはどんなに疲れていても、帰宅したらわたしの部屋に来る。
だから、彼をお迎えするのもわたしの役割になってる。
「カイル、お疲れ様。なにか飲む?」
「ああ、済まない……ジントニックを」
カイルのリクエスト通りに、ライムを切ってグラスに果汁をつけると、ライムと氷を入れジンとトニック・ウォーターを注いでかき混ぜる。
彼のリクエストに応えてるうちに、カクテルを何種類か作れるようになったし、ミニ・バーまで部屋に設けられた。
「はい、あ。寒い?暖房強くしようか?」
グラスを渡した時、カイルの指先が冷たくて心配になる。
「アルコールを取るから大丈夫だ…それに」
ジントニックをひとくちだけ飲んだカイルは、わたしの肩を抱いてにやりと笑う。
「後で、くるみに暖めてもらうからな」
「も、もうっ!バカなこと言わないで」
頭から一気に熱が上がり、顔が真っ赤になったのが自分でもわかる。
でも、カイルは毎日毎日大変そうだ。だから、わたしでできることなら、なんでもしてあげたいと思うよ。
「くるみ」
「なに?」
「今日も、屋敷から出てないな?」
まただ。
最近、カイルはこう訊いてくる。
1か月前にでかけた時以来、わたしは外出を禁じられてる。理由を訊いても、「危ないから」としか言われない。
だから、光輝の誘いに乗ってしまったのかもしれない。