シルバーブロンドの王子様が甘すぎる〜海を越えた子守り唄
「よお、よく来たな。まぁ入れよ」
いつの間にか資材置き場から出てきた光輝が、顎で倉庫の中に入るように促す。
カイルの予想通りで、これも想定内。
資材置き場は真っ暗ではなくて、いくつか窓があるしランタンが置かれてはいるけど薄暗い。
薄暗がりにいても、光輝がやつれ荒んでいるのは見て取れる。
「座れよ」
クイッと顎で示した先には、不自然極まりない木の椅子が一脚。どう考えても、おかしすぎる。
「いや!あなたのことは信じられない。話ってなに?早く話して」
自然と口をついたこの言葉には、光輝だけでなくわたし自身も驚いた。
つい1か月前までのわたしは、光輝の言う事ならなんでも聞いてきたから。アパートを出ることも、別れさえも。
それなのに、今のわたしはハッキリと自分の気持ちを自分の意志で口にした。
自分に自信がないとできないこと。
(カイルのおかげだ……彼が、わたしを認めてありのままを受けとめてくれたから……)
今なら、わかる。
光輝が口にしてきた耳触りのいい言葉は、ただの上辺だけだった…と。
本物と思って喜んだダイヤモンドのネックレス。それと同じものが、百均で見つかったように。
エミリと光輝の仲は本当はわたしがバイトする前から始まっていて、実はわたしの方が浮気相手だったんだ…と。真実を、カイルが教えてくれた。写真付きで。
5年前に撮ったラブプリやホテルでの写真。
高校の同級生だった2人が付き合うのは自然なことだった。