シルバーブロンドの王子様が甘すぎる〜海を越えた子守り唄
そういえば、午前のシフトから帰ってきてから、ダブルベッドのベッドカバーも枕も布団も変わってた。
好みでないから替えようとしたら、光輝くんは触るなとめちゃくちゃ怒って…頬を叩かれた。
最近も、寝室やリビングのカーペットやラグ、家具や小物が少しずつ 少しずつ変わっていってる事には気づいてて…落ち着かなくなっていたけど。
よく考えたら、エミリらしい派手で豪華なものばかり。今ではすっかりエミリ好みの部屋だ。
そんな寝室に2人で向かうということは…
やがて、エミリの甘い声が上から漏れてくる。
“荷物まとめてとっとと出ていけ!”
光輝くんの感情がない冷たい声が、ぐわんぐわんと頭の中で反響する。
のろのろと体を起こすと、キャリーケースを持ってバスルームそばにある自分のタンスを開けて中身を詰め替える。
光輝くんと暮らした約2年…結婚のために節約していたから、荷物は十分キャリーケースに入れられた。
12月の夜だから外は寒い。唯一持っているコートを着て首もとは手編みのマフラーを巻き、ブーツを履いて手袋も手にはめる。
「光輝くん、エミリ…今までありがとう……さよなら!!」
聞いてないだろうけど、精一杯の感謝を込めて声を張り上げてから、傘を手にアパートを出て冬の雨が降る街なかへ足を踏み出した。
頬を流れる熱いものに、気づかないふりをしながら。