シルバーブロンドの王子様が甘すぎる〜海を越えた子守り唄
(……いつまでもここにいるわけにもいかないし……今日はホテル……ネットカフェ……ううん、ファミレスでも行こう)
結婚用に貯めたお金は光輝くんの口座に入れてきたから、いまさら取り返せない。自分の口座にはまだ少しある。無くなるまえに、なんとか寮のある会社や住み込みの仕事を見つけないと…。
(たしか、ここの通りをまっすぐ行くとファミレスが……)
夜遅い時間帯だけど、金曜日の夜は週末休みの人たちで浮き立ってる。まして、クリスマス近い時期。駅前のクリスマスツリーやイルミネーションを見るカップルも多い。
二年前に光輝くんがこのクリスマスツリーの前で、将来結婚しようとダイヤモンドのネックレスをくれて……2人で暮らし始めて。幸せだった。
こんなわたしでも必要としてくれて、愛してもらえるんだって…。
ずっと、ずっと。光輝くんと一緒に居られると思ってた。彼の言うことはなんでも聞いたし、苦手な料理も家事もすべて頑張って…倹約もして。2人のために収入を増やそうと資格の勉強を頑張って。高卒認定も受けようと努力して…少ないお金でも、可愛くなりたいと頑張ってたのに。
“赤い目も人形みたいで気持ちわりぃんだよ!顔も見たくねえ”
“超キモいんですけど?”
そんなことを言われたら…わたしにはどうしようもない。
わたしだって…好きでこんな目に生まれたわけじゃないのに!
いたたまれない気持ちで、早足で駅前通りを抜けようとした。