シルバーブロンドの王子様が甘すぎる〜海を越えた子守り唄
駅前通りの街路樹の脇にある花壇。そこで、男性がうずくまっていた。いえ、倒れている?
全身泥まみれで黒髪はボサボサ。ひげは伸びっぱなし。コートは破れ擦り切れてる。一目で外で暮らすような人で、言ってみれば汚い格好だった。
顔が赤いし、苦しげな呼吸を繰り返してる。
どうしよう、と迷う。
周りを見渡しても、わたし以外足を止める人はいない。無関心に通り過ぎるか、チラッと見ただけで目を逸らすだけ。
誰も、助けてはくれない。
誰も、手を差し伸べようとしない。
小さな頃のわたしと同じーー。
正直な気持ち、わたしも関わりたくはなかった。
こんな、住む家も職もないわたしが。自分の先すら見えないのに、無責任に関わっていいのか…と。
今なら、わたしもわかる。
自分の精神と経済的に余裕が無ければ、他人なんて助けられないんだと。
だから、今は通り過ぎる人たちを責められない。
わたしも、何度も何度も逡巡した。
悩んで悩んで……そして、決めた。
その場でしゃがみ込むと、傘をさしながら彼に話しかける。
「あの……大丈夫ですか?」
「…………」
「え?」
なにか言ったみたいだけど、よく聞こえなくて耳を近づける。そして、彼の口から聞こえたのが……。
「イル、タゥート…デマス……」
「えっ……」
どうしてか、知らない言語のはずなのに。その言葉の意味がわかった気がした。
“ななつのこよ…”