【続】酔いしれる情緒
新たな物語が始まります。


後日。



テレビのニュースも新聞の記事も

海辺で記者らしき人達に撮られていたんだから一面を飾るのは一ノ瀬櫂の結婚報道だろうと思っていたが、意外にもそんなことなくて。いつも通りの朝のニュースに政治関連の新聞記事。



人気俳優が入籍した次の日というのに

今までと至って変わらない朝だった。



騒がれるほどでもないってこと?

人気俳優なのに?


春が言うほど一ノ瀬櫂はそこまで人気がないのかもしれない。なんて思っていれば。



「昨日結婚発表しておいたから昨日がピークっぽいね」

「………………」



どうやら私の知らない間に世間では騒がられていたらしい。



…そういえば昨日慎二くん騒いでたっけ。


ちゃんと聞いていなかったけど、



「ちょっ…安藤さん!!知ってるっすか?!
一ノ瀬櫂が!結婚を発表したみたいっすよ!!!」



……って、言ってたような気もする。




慌ただしい時間は入籍した次の日も橋本と由紀子さんが家に押しかけてきたことによって変わらず続いた。


入って来るなり橋本は春をとっ捕まえてその場で大説教。


同じ空間にいた私と由紀子さんもなんだか怒られてるような気分だった。


だけど春はそんな橋本に慣れているかのような。終始反省の色を見せないまま反抗したりするから橋本のキレ具合もピークを超える一方で。



「あの、よかったらこれ……」



眉間にシワを寄せる橋本に昨日コンビニで当てた温泉旅行のチケットを渡せば、意外にもそれがお気に召したらしい。



「いいんですか?」

「あ、はい。どうぞ使ってください。
ちょうど誰かに譲ろうとしていたので」

「俺と行けばいいじゃん」

「アンタは黙ってて」

「じゃあー」



少し考える素振りを見せた橋本が由紀子さんの腕を掴んだときは本当に驚いた。



「有難く使わせてもらおうか」

「は、橋本さん…!?」

「こういうのがないと行く機会がないだろう」

「っ~~~!!」



頬を真っ赤に染める由紀子さんを見るのは二回目だ。


一回目は春に顔を覗き込まれていた時。


表情からして春に好意があるんだと思っていたけど、どうやらその予想は違ったらしい。



「イチャイチャするなら外でやってよ」



春は二人の関係を元々知っていた感じだし。


知らなかったのは私だけみたいだ。

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