【続】酔いしれる情緒
お互いにギュッとして、抱きしめ合って
胸の音を聞いて、ぬくもりを感じて。
(もうこのまま死んでもいいかも)
なんて。馬鹿げたことを考えてしまうくらい、今私は春の全てに酔ってると思う。
「アラーム鳴ってるよ」
「……………」
静かな空間に響き渡る、アラーム音。
幸せな時間はもう終わり。
それを知らせる音がこの部屋に響き渡っているんだから、もちろん私の耳にも届いている。けど。
「もう少しだけ…」
彼の服にキュッとしがみつく。
今日も朝から仕事。
早く準備しなくちゃ。
遅れてしまうかもしれない。
遅刻なんて絶対にダメ。
分かってる。
分かってるけど─────離れたくない。
「………………」
この時、
春は何も言わずに
離れ難くなっている私をまた抱きしめた。