【続】酔いしれる情緒


それからまた数分が経って、そろそろ本当に遅刻してしまうと悟った私は慌てて準備をした。


いつもより少し遅めに家を出ることになったけど、走れば間に合う。



「気をつけてね」

「………今日休みなの?」

「うん。休み。」



その言葉に、思わず靴ひもを結ぶ手が止まる。



「そう…なんだ……」



休み……なのか。



じゃあ今日は、

私以外の誰かに触れることもないんだ。



(…嬉しい。)



私も休みだったら

今日1日、ずっと一緒にいられたのに。



「凛?」



悪い考えで頭の中が支配されつつあった時、春の声でハッと我に返った。


……ダメ。行かなきゃ。



「じゃあ……行ってくる」

「うん。いってらっしゃい」



ニコリと笑顔を向ける春。


そんな彼に飛び込みたい気持ちをグッと抑えて外に出た。

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