【続】酔いしれる情緒


2人が言い合いをしているのをよそに、私は橋本に言われた部屋にこもってあの写真を眺めた。


清美一花がした事なのかは未だ分からないけど、

私はそうなんじゃないかと思ってる。


あの日、私の前に初めて現れた時。


清美一花は私のことを確認しに来たんじゃないかと。


一ノ瀬櫂の結婚相手。その相手が誰か、どんな人か、どんな見た目か。


どこから私の情報を得たのかは分からないけど、観察しに来たんじゃないかと思った。


その時の清美一花は謎に『春』と発言し、その言葉を毎日のように口にしている私は動揺した。


あの発言はきっと……私が一ノ瀬櫂の結婚相手だと、ちゃんと調べるためにしたことなんだろう。


動揺している私を見て、清美一花は確信を持った。


そして



(後をつけられた…?)



全てが、上手く当てはまっていく。


清美一花は春のことが好き。


だからこそ、清美一花からすれば私はいらない存在で、邪魔者だ。



この嫌がらせもきっと

私達の仲を悪くさせるためだ。



「安藤さん?」

「あ……はい。どうぞ」



コンコンとドアを叩く音と共に由紀子さんの声がした。


由紀子さんも最近からこの橋本家で暮らし始めているらしい。


2人が同棲をしてるのにも関わらず、ここには今、私と春がいる。


私達、逆に邪魔じゃないか?
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