【続】酔いしれる情緒
「は……」
もう心も身体もぐちゃぐちゃだった。
一花さんが持ちかけてきた契約に
薄れる意識の中で
「はい」と答えようとした──────時。
ドンッ!!!!
と。爆発音と間違えてしまっても仕方がないくらい、とてつもなく大きな音だった。
その音のおかげで一花さんの手の力が一瞬緩むと、私は今出せる力でその手を引き離した。
解放された私は大きく息を吸う。
でも、咳が止まらなくて苦しい。
涙が出る。
頭も痛い。
「凛!!!!」
胸も心も全部痛い。
脳内に響き渡った彼の声。
幻覚?なのかな。
ああ、でも。
「は る……」
幻覚であっても
会えて嬉しいと思ってしまう。
力が出ず、這いつくばっている私は春の手によって抱き抱えられた。
「凛っ、─────っ!!」
「(何か…言ってる……)」
私に向かって必死に何かを言っている春。
心の底から安心したからかな?
頭がボーッとして、何も、聞こえない。
ただ、視界は薄らであってもまだ見える状態で
(橋本…?由紀子さんもいる……)
春以外にも、この部屋には数十人ほどいて
その中には見慣れない人もいた。
(誰なんだろう…関係者…?たぶんそうだよね……春変装してないし…)
薄れゆく意識の中でもっと他に気にするところがあるはずなのに
意識が切れる前、私は冷静にそんなことを考えてた。
春の手が震えていたことも
泣きそうな顔を浮かべていたことも知らずに。