【続】酔いしれる情緒
想像しただけで背筋がゾクッとした。
一花さんの春に対する愛は異常なほどだった。
だからこそ、
『春を殺して自分も死ぬ』
そんな普通じゃないようなことがありえる話なのだ。
「えっ、安藤さん!?」
身体に掛けられた布団を捲ってベッドからおりた。
もちろん由紀子さんに止められたけど、今は自分の身体よりも先に優先すべきことがある。
個室を飛び出して廊下に出ると、
その個室近くにある椅子に彼はいた。
顔を俯かせているから表情が確認できない。
「春…!」
咄嗟に名前を呼んだ。
ゆっくりと顔を上げた春を見て
その姿を瞳に映した時
私は心の底から安心したのだ。
彼の生存を、この目でちゃんと確認したかったから。
良かった、生きてる。
怪我も無さそう。
ああ、良かった。
「凛…」
弱々しい春の声。
私はそんな春の元に駆け寄っては頭からギュッと抱きしめた。
「良かった……生きてた」
「それ俺の台詞だし…」
腰に回された腕は私をキュッと抱きしめる。
その腕の力は緩く、弱かった。