【続】酔いしれる情緒
決断する時です。
「ここだよ」
あれから数時間後。
一花さんのいる場所へと向かったのは私と春だけ。
私達はタワーマンションを目の前にしてタクシーを降りた。
「……本当について来るの?」
「うん、行く」
考える暇もなくそう答えれば、春は複雑そうな顔を見せる。
ここまで来るのにあまり時間は掛からなかった。
一応入院扱いだった私だけど、体調は比較的安定しているからと、なんとか医師からの許しを得て即時退院という風にしてもらった。
そして由紀子さんが今その他諸々の手続きを済ませてくれている。
「身体は何ともないし大丈夫だよ。」
「だとしても……」
「今は春がいる」
「………………」
「絶対に離れないから」
「……分かった。」
揺らがない私に春も渋々と納得し、中へと入る。
春は手馴れたように番号を打ち込むと、エントランスの大きなドアが開いた。
ここの解除方法は橋本から前もって聞いていたらしい。
(それにしても……私がここにいるってよく分かったな)
あの時連絡も何も出来なかったのに
春と、それから橋本達はこの場所へ来てくれた。
確実ここにいると分かっていたみたいに。
となれば、居場所を特定するようなものを私のどこかに……
そう、GPSのような。
そんな物を取り付けられている気がして仕方がない。
まあ…考えられるのは"携帯"だけど。
前に春が私の携帯を使って何かしていたし。
その時にGPS機能を取り付けていたのだろう。
おかげさまで助かったけど。