【続】酔いしれる情緒
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「この辺りで大丈夫ですか?」
「はい、ありがとうございます」
目的の場所に着いてスグ、急いで車を降りた。
近くの階段を上がって防潮堤の上に立つ。
潮風が髪を靡かせ、視界を少し遮られながらもキョロキョロと周りを見渡した。
そして見つける。少し奥の方で私のいる防潮堤の上に誰かいると。
遠くて、誰かなんて良く分からないけれど
目を細めてジッと見つめれば
その人の近くにある車が目に入り
(あの車、)
見覚えがあった。
だって少し前に乗ったことがあるから。
あれは確実橋本の車。
そしてここは春の穴場スポット。
間違いない。
「春。」
その人の元へ近づき、
その名を呼んだ。
その人はビクッと肩を揺らし
目を丸くして、私を見た。
「凛……」
なんで今、私がここにいるのか、驚きを隠せないみたい。