【続】酔いしれる情緒
「よくここが分かったね」
「疲れた時はここに来るって言ってたから」
「ああ、言ったかも。」
春は苦笑いを浮かべた。
"俺さ、疲れた時とか、よくここに来るんだよね。"
初めてここに連れられたとき、春はそう言っていた。
だから今、彼はそういう状態。
何に疲れているかは聞かなくても分かる。
けど、だからといって
「春」
「ん?」
海を見つめる彼を呼ぶと
春は海から私へと視線を移す。
バッチリ目が合ってから
「っ、……」
パチンと、彼の頬を軽く平手打ち。
芸能人なんだから顔に傷をつけちゃいけないことは分かってる。
けど、今はそんな理由関係ない。
「勝手にいなくなるなんて、どういう神経してるの」
私は人生で初めて、人にビンタした。