【続】酔いしれる情緒


サアァ…と潮風が吹く。


その風が私達の衣類やら何やらを揺らす。


髪がふわふわと靡く春の姿は
やっぱり何かのワンシーンみたいだ。



「………、それは、私と離れたいってこと?」

「………………」



私の問いに頷きはしなかった。


いつもと違う感じに思わず春の頬に手を添えてグッと距離を詰める。



「何を、言ってるの?」



声が震える。



「冗談だよね?」



そう聞くのが、凄く怖かった。



「…結婚したんだよ?
そう簡単に離れられないの分かってる?」

「簡単だよ。
紙切れ1枚だせば、俺との関係は終わり。
凛は自由になる。」

「…………本気で言ってるの?」

「本気だよ」



一瞬、言葉が詰まる。


おかしいと思った。



「本気なら……そんな顔、しない」



こんなにも力のない笑みを見るのは初めてだったから。
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