【続】酔いしれる情緒
「あー……もう、どうしたらいいんだろう…」
耳元でそう呟く春は酷く困っているような。
理由は分かってる。
遠回しに離れたいと言いながらも、春は今、その腕の中に私を閉じ込めてるから。
「あの件はもう終わったよ」
「……うん。けど、この先また同じようなことが起きないとは言い切れない。俺があの仕事をしている限りはずっと。だから───」
その瞬間、春はハッとした顔を見せた。
「そっか、辞めればいいのか。」
「え?」
今、なんて言った?
とんでもないことが、聞こえたような。
恐る恐ると顔を上げると
そこにいる春も私に視線を向けていて
バチッと目が合うが、
聞き返す暇もなく、春は言う。
「俺、芸能界辞めるよ」
唐突すぎて目を丸くする私に対し、春は笑顔。
いや、まあ、
さっきの苦しそうな表情より
今の方が断然良い、けど。
「そうすれば……
何の心配もなく、凛の傍に居られる」
辞める理由がそれだとすれば
だいぶ話が変わってくる。