【続】酔いしれる情緒
この気持ちに気づかれていることは私も薄々と感じてはいた。
だけど、この瞬間にハッキリと告げられてしまっては言い返す言葉が見当たらなくなってしまう。
もう隠したって無駄なんだって。
「離して…」
「離さない。」
「見せたくない」
「見せていいよ」
ちょっと強引に顔を逸らして見るが、春の手によってまた同じ位置へと戻されてしまう。
「言ったじゃん、俺。」
目の前にいる彼を見ないよう視線を逸らすけど
「覚えてない?」
春は私の顔を両手で挟んでは引き寄せて
「凛の望むことならなんだって叶えるって」
耳元でハッキリとそう告げては
私の心を揺るがせる。
戸惑いながらも視線を向ければ春はニッと笑った。
「我慢しなくていいんだよ」
「……………」
「もう大丈夫。」
「っ、」
「これから先は二度と嫌な思いさせない」
その瞳に捕らえられてしまえば
もう、抗えない。
私の身体は春だけを受け入れて
波の音も肌に感じる風の感覚も
全てをシャットダウン。
逃げ腰になっていた身体は縋り付くみたいに春に触れて近づいて。
私は優美な笑みを浮かべる彼に見下ろされる。
身体がポカポカと熱いのは
「ずっと一緒にいよう」
彼の瞳、笑顔、声。
その全てに酔っているせいなのかも。