【続】酔いしれる情緒
「あ。今日初めて見るね」
そしてテレビではさっきまで今流行りのデザートなどを紹介していたコーナーが終わったみたいで、
『人気俳優の一ノ瀬櫂さんが昨日結婚を発表されました!』
「………………」
春の言う通り、
今日初めて耳にしたし目にした。
大々的にテレビ画面に映し出されているのは昨日海辺で撮られていたであろう、あの場面。
「ロマンチックに撮られちゃったね~」
「最悪…」
春が私を抱きかかえている(お姫様抱っこされている)あの場面だった。
私の顔はしっかり隠れてはいるけど、そうであっても恥ずかしい。
「俺的にはキスしてるところ使われると思ってたのにな~ 残念。」
って。本当に残念がる顔を見せる春。
世間に私達のキスシーンを広められるなんてたまったもんじゃない。
『それにしても驚きましたねぇ~。つい最近まで熱愛疑惑が浮上されていた中での結婚報道。お相手は一般の方みたいですね!』
「いつの間にこんな発表までしたのよ…」
「凛に会う前にさくっとね。」
「私が断ってたらどーしたわけ?」
「そんなこと起きないよ。
何を言われても逃がすつもりなかったし」
『なんでも、一ノ瀬さんがベタ惚れだとか。』
独占欲が強めで
嫉妬深くて
強引で
「結婚出来たのが今もずっと夢みたいだ」
そんな奴だと分かっていながら
結局婚姻を決めたのは自分。
平凡だった毎日に華を咲かせてくれた人。
色鮮やかな世界を見せてくれた人。
「もう気兼ねなく凛に触れられる。」
そんな人と結ばれた私は
一体どこまで堕ちるつもりなんだろう。