【続】酔いしれる情緒


家に着くと春は久しぶりの我が家に分かりやすく安心した顔を見せた。



「春。ちょっとそこで待って」

「ん?」



玄関から先に私が家の中に入って



「おかえり、春。」



手を広げて彼を待つ。


そんな私の姿を見て春はふわりと笑った。



「………ただいま。」



春の腕の中に包み込まれて、私までホッとする。


旅行中も何度もキスやハグを交わしてきたけど……やっぱり家でするのとでは違うというか。

心の底から安心出来る場所で、誰よりも安心して一緒にいられる相手とするキスやハグは最高の至福だと思う。


この瞬間は周りの全てが消え去って、ただ彼と私だけが存在する世界にいるような感覚に包まれて。

彼の体温と息遣いを感じ、私も彼に自分の温もりを伝える。その一瞬だけでも、全ての不安や疲れが癒されるような、心地良い安心感に包まれる。



「はー…やばい。ずっとこうしてたい…ダメ?」

「ご飯作れないからダメ」

「もういいよ、作らなくて。ずっとここにいて」

「パスタ食べたいんじゃないの?」

「食べたいけど〜…」

「じゃあ退いて」



ちょっと冷たく言ってしまったけど、まあ仕方がない。


じゃないと離れてくれないし、

尚且つ、私も離れがたくなってしまう。



「……はーい」



ちょっと不貞腐れ気味の春。

いや、不貞腐れてるな、完全に。

< 220 / 246 >

この作品をシェア

pagetop