【続】酔いしれる情緒
春の腕から解放された私はキッチンへと向かう。
えっと、確か作り方はー…
「凛の荷物部屋に入れとくねー」
「あ、ごめん。お願い」
荷物のことすっかり忘れてた。
荷物を私の部屋へと運び入れる春。
その姿を遠くから見つめて
再び料理に取り掛かろうとした時
ふと、思い出す。
(……そういえば。クローゼット閉めたっけ)
飛行機に乗る日。
その日まで仕事を入れていた私は家に帰って慌てて旅行の準備をして、一ノ瀬櫂の写真集が置いてあるクローゼットを開けたまま出てったような……
だとすれば。
今春は私の部屋に居て
開いたままのクローゼットの中を見て
自分自身の写真集を目の当たりにして───
「ちょっ…ちょっと待って!」
慌てて部屋に駆けつけると、その中には春の姿。
そしてやっぱりクローゼットは開いたまま。
見られた?見られてない?
どっちだ??
恥ずかしさもあってか身体は熱いけど、冷や汗もかきはじめている私。
ゆっくりと振り返った彼に唾を呑む────が。
「あ、凛。キャリーバッグこの辺でいい?」
「え…?あ…ああ、うん。大丈夫…」
「おっけ〜」
あれ……
見られて…ない?
割とスグ見える位置に置いてあったはず。
でも春の態度は変わらないし……