【続】酔いしれる情緒


そう気がつくと、口から溜め息が出るほどに安心した。



(またこんな事があったら疲れるし…後で見えないところに移動させよ)



「ありがと、運んでくれて。後はするから先にお風呂入ってきなよ」



その間に移動させよう…


なんて、思っていたが。



「じゃあ凛も一緒に入ろっか」

「え? …きゃっ!」



急に抱きかかえられ、足は宙ぶらりん状態。



「ちょっと!おろして!!」

「ダーメ」



そのままスタスタと軽々しく歩いてみせる春に連れ出された場所は洗面所 兼 脱衣所。


隣には、湯船付きのお風呂場が。



「まだ入らないってば…」



その場にゆっくりと下ろされると

春は私の頭をさらりと撫でる。



「俺がいない間、寂しかったんだね」



そう言われて「なに?急に…」と口をついて出そうになったが、



「……、まさか。」



言う前に、気がついてしまう。



「……見た?」

「見ちゃった」

「今スグ忘れて」

「忘れないよ」



徐々に春に押された身体は
トンッと何処かに腰が当たる。


逃れようにも、逃げられない。


私の前に立ちはだかるのは



「寂しかった?」



私に少し意地悪をして、顔を覗き込みながらそんなことを言う、春だ。

< 222 / 246 >

この作品をシェア

pagetop