【続】酔いしれる情緒
私は昔から水中に潜るのが得意な方だった。
家族で海水浴に来た時はいつもこうやって水中に沈んでは海面を眺めてボーっとして。
音のない静かな場所で、キラキラと煌めく光景を見るのが好きだった。
(そのせいで毎度心配されたっけ)
溺れているんじゃないかって。
親から何度も引っ張り上げられた記憶がある。
(そろそろ上がらないと心配かけちゃうよね。…主に橋本が。)
想像出来てしまう。橋本の慌てた姿。
そうなる前に浮上しようと、
閉じていた目を開けた。
その瞬間瞳に映ったのは
(………、春……?)
キラキラと煌めく世界の中で
私だけしかいないと思っていた場所に、春の姿。
その顔はどこか必死で、私に向かって泳いでくる。
そんな春の姿が私の瞳に映った瞬間、私は思わず息を呑んだ。
え、なんで。
だって春、海に入るの怖いんじゃ。