【続】酔いしれる情緒
「えと…」
私の中で「断る」という考えはもう無いけれど、
このままマネージャーとして働いて、仕事が上手くいかなくて、橋本さんに幻滅されたらどうしよう…
その不安が心の中で渦巻いていると、不意に目の前に綺麗な顔が。
「ねえ、名前なんて言うの?」
「あ、え、た…立花です…!立花由紀子と言います!!」
「じゃあ由紀子さんね」
「(由紀子さん…!)」
生まれて初めて男の人に下の名前を呼ばれたかもしれない。
「だから…その距離感どうにかしろっていつも言ってんだろ」
「だから誰にでもじゃないって言ってるじゃん。関係を深めたい人にだけだよ」
「ね?」と不意に話を振られて、つい私は頷いた。
その様子に橋本さんの呆れ顔。
「……立花さん。念の為言っておくけど、コイツを好きにはなるなよ」
「な、なりません…!!!」
食い気味にそう答えても橋本さんは未だ苦い顔をする。
それは私にその可能性がありそうだからか、それとも「フられた〜」と楽しげに笑う彼に不安があるからか。
どんな理由であっても
「…マネージャーとして頑張ってくれるか?」
私の事をちゃんと見ててくれていたこの人に
「はい。任せてください!」
私の頑張りをもっと見てほしいと思った。