【続】酔いしれる情緒
「え…部下…?」
「と言ったが?」
「いやいや橋本さん。一体なんの冗談です?仕事もろくにこなせないコイツが貴方の部下なわけ…」
「他人を貶めて自己満足に浸るのは楽しいか?」
「……は?」
「本当にそう思っているなら、貴方の方こそこの業界に適しているとは到底思えないな。」
「何だと!?」
「そんな奴が在籍する会社に弊社のタレントの撮影を今後依頼するとでも?」
「っ………」
「口は災いの元だ。言いたいことがあるなら今後のことをしっかり考えた上で物を言え。」
口ごもる元上司に橋本さんは冷静な態度で追い打ちをかけると
「行くぞ」
「は、はい!」
私にそう声をかけてその場を後にした。
「あの……橋本さん」
「なんだ?」
「すみません…私のせいでまた新たに撮影会社を探さないといけないですよね……」
「そんなこと気にしなくていい。あの会社の代わりなんていくらでもいる。あとちょうど契約を切ろうとも思っていたところだしな」
エレベーターに乗り込むと、橋本さんは閉じられた扉の後ろで私の頭を優しくポンッと叩いた。
「今までよく耐えたな。もうその辛さを抱え込む必要はない、大丈夫だ。」
この瞬間から、私は橋本さんを尊敬するだけでなく、好意を抱くようになったんだと思います。
人としてしっかりしていて、男気もあって。
何かあればいつでも頼れる存在であり、優しさも兼ね備えているこの人に。