【続】酔いしれる情緒


そこからはどうにか橋本さんとの距離を詰めたくて、見かけたらいつも話しかけていました。

この人の素はきっと「俺」の方なんだと思うけど、私や他のスタッフの前では一人称は「私」。

社長とただの社員じゃ一定の距離感があってあたりまえ。

その距離感を詰めたいと思うのは私の身勝手な感情だ。


でも、それでも、


私はもっと近づきたかった。



「私……橋本さんが好きです」



マネージャーとして働き始めて半年。


心の中で溜めてきたものがもう堪えきれなくなって

春くんのドラマの撮影中。その撮影場所の端っこで、撮影現場を眺めながら呟くように橋本さんに告白した。



「……………え?」



その時の橋本さんの驚いた表情は今でも記憶に残ってる。


その後スグに休憩タイムが入り、



「なに?2人して。顔真っ赤じゃん。
キスシーンで顔赤くなるような人だっけ?」



そう春くんに弄られては恥ずかしくなって、私は何も言わずに逃げ出しました。



「え。まってもしかして」

「お前は黙ってろ…」



後から春くんに聞いた話では、橋本さんはその日一日、ずっと上の空状態だったみたいです。
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