【続】酔いしれる情緒
それからというもの、
「あの人……誰ですか?」
春くんの家に家政婦さんがいたり
実はその人は春くんの大切な人だったり。
契約に違反しているからと、橋本さんは彼女の存在を凄く反対していましたが春くんも中々折れようとはせず、そこから2人は険悪モードに。
用があって社長室に訪れた時、橋本さんは毎度何かを考えている様子でした。
私の告白のことよりも、今は春くんの事でいっぱいなんだろうなって。
「………橋本さん」
「…ん?ああ、悪い。どうした?」
「少し見て頂きたい物がありまして…」
「分かった」
私から紙を受け取った橋本さんは浮かない顔のままで。
「そんなにダメなことなんでしょうか…」
ポツリと呟くと、橋本さんはやっと私を見てくれた。
「確かに春くんは契約違反をしました。だけど、大切な人がいるのはそんなに悪いことなんでしょうか…?」
「………アイツの立場を知ってる上で言っているのか?」
橋本さんの口調が変わり、ピリッとした空気が流れる。
言ってしまったものはもう取り消せるはずがなく、
「彼女の存在があったとしても、春くんは仕事を怠ることなく人一倍頑張っています。それは心の拠り所があるからこそ頑張れるんだと…私は思います」
「………………」
「そんな春くんの努力が、大切な人がいるということだけで水の泡になってしまうとは思えません…」
「それはキミの憶測だ。みんながみんな、キミと同じ考えじゃないんだぞ。」
「そう…ですけど……」
「やけにアイツを庇うな。好きなのか?」
何故か優しく微笑みながらそう言う橋本さんに
私の心は一気に悲しくなった。