【続】酔いしれる情緒


「違います…!なんでそんなことを言うんですかっ…私が誰を好きかなんて、そんなの、もうっ…」



分かってるはずなのに。



それ以上は言葉に出来なくて、私は涙を堪えたまま部屋を飛び出した。


ちょうどそこで春くんとすれ違ったものの、会話をすること無く、逃走。

きっと春くんも橋本さんに用があったんだと思います。



「あーあ。拗らせちゃって」

「………………」

「好きなら好きって早く言えばいいのに」

「……今はそれどころじゃない」

「誰かに取られても知らないよ」

「………………」

「手に入れたいなら、ちゃんと捕まえておかないと。」



この時の橋本さんは2つ悩みがあったと後で知りました。


それは春くんの事と、あの告白の返事。


橋本さんは告白された日から少しずつ私を意識してくれていたみたいです。

好意があると気づいたのは、春くんに煽られた、ちょうどこの瞬間だったと言っていました。



この事がきっかけとなったのか、橋本さんは春くんに1つの条件を出し、それを守れるのであれば彼女との結婚を許可する方針となりました。

あれだけ反発していた春くんもその後は条件をしっかりと守り、今じゃ2人は夫婦に。



そしてその許可がおりた日から数日後、


落ち着きを取り戻した日々の中で



「……付き合うか。」



ドラマの撮影中

その撮影場所の端っこで、撮影現場を眺めながら呟くように橋本さんがそう言いました。


私が告白した時と同じシチュエーションで。


私は嬉しくて嬉しくて、撮影中だから大きな声で返事は出来なかったけど、その返事として何度も頷きました。


その後撮影が終わって帰ってきた春くんに「顔真っ赤」と、また弄られてしまいましたが…。

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