【続】酔いしれる情緒
「春」
もう一度名前を呼んでみると春はハッとした顔を見せた。
「どうかしたの?」
「あー……なんでもないよ。
凛可愛いなって、見惚れてただけ」
なんて。分かりやすい嘘。
だってさっき
その瞳に私が映ってなかった。
「その服似合ってる。買う?」
「…いい。いらない」
「そっか。じゃあ他に気に入ったものがあったら言って?外で待ってるから。」
私の頭を一度くしゃりと撫でて
試着室から出て行った春。
急な態度の変化に私は不思議に思うばかりで
それと同時に
(何を……隠しているんだろう)
モヤモヤと、変な気分。
結婚して尚
私には言えない何かがまだあるらしい。