【続】酔いしれる情緒
「関係者って、誰?」
私はそのタブレットを操作しながら、言う。
「カメラマンさんとかメイクさんとか。他にも色々いるけど、ひっくるめれば撮影で関わる人達かな」
撮影で関わる人……なら、
「桜田紬とも来たことある?」
画面をタッチして指をスライドさせる。
何にしようかな。とりあえずコーヒーと、それから春が言ってたティラミス食べてみたいかも。
8割はメニューのことを。
残り2割の意識は春に当てる。
だって、
意識すればするほど
「うん。あるよ」
心に黒いモヤがかかってしまうから。
「あ。そうだ」
春は財布の中から何かを1枚取り出して
「これ渡そうと思ってたんだった」
「何?」
「試写会のチケット。あの映画そのうち観に行こうと思ってたでしょ?だったらこれ使うといいよ」
あの映画とは、私達が結婚した理由の一つでもある、私が春に紹介したあの本の実写映画だ。
もちろん主演は一ノ瀬櫂。見覚えのあるチケットだなと思っていれば、やっぱりそういうこと。