【続】酔いしれる情緒
『足元にお気をつけくださーい!』
今日が平日なだけあって待ち列は短く、順番はスグにまわってきた。
止まることなく動き続けるその乗り物にどこか慌てて乗り込む。
身長の高い春は乗り込む時に軽く頭をぶつけていた。
どうやら足元ばかり気にして頭上を注意していなかったのだろう。
『それではいってらっしゃーい!』
扉を閉められると、この場には静けさが広がる。
(観覧車なんてほんと久しぶり…)
いつ以来だろう。
思い出せる限りでは小学生のとき以来?
だけどこんなに大きな観覧車は初めてかもしれない。
左右に視線を当てて外の景色を見る。
まだ始まったばかりだから見える景色も低い。
「……大丈夫?」
やけに静かな春にそう心配の声を掛けた。
お互い向かい合うように座っているから顔を俯かせている春の姿が真正面からハッキリと見える。
さっき頭ぶつけていたし、想像以上に痛かったのかな。
「どの辺ぶつけたの?」
立ち上がって春の隣に移動しようとした。
が。
「まって!!!」
「え?」
「…動かないで」
…………何事?
急に大きな声を出したかと思えば、私に動かないよう命令する。
意味がわからなくて1歩足を進めてみれば
「うわっ、揺れる」
「………………」
顔を引きつらせる春。
………あれ。もしかして。