【続】酔いしれる情緒
「高いところダメなの?」
「そんなことな……ちょ、動くな!こっちに来たら傾くから…!」
「ふーん?」
ストンと春の隣に腰掛ける。
春は両手で顔をおさえて「もーだめだ…終わった」なんて。死を覚悟したみたいな、そんなことを言う。
「そんなにビビらなくても」
「結構傾いてる気がする…」
「気のせいだって。ほら、景色凄く綺麗だよ」
4分の1ほど上った所で春は恐る恐ると外を眺める。
けどスグに「うわぁ…」と感動ではない声を漏らして顔を俯かせた。
「高いところダメなら先に言ってよ」
「だって……凛が乗りたそうだったから」
「無理しなくていいってば」
「無理してでも叶えたいんだよ……凛の望むことなら、全部」
「………………」
私の、望むこと。
その途端に心にも頭にも広がってく嫌な自分。
私が望むことは、
こうやって観覧車に乗ることだとか、服が欲しいだとか。
そんな可愛らしいものなんかじゃない。
もっともっと醜くて哀れで、春のことを想うなら絶対に望んではならないもの。
もう二度と、言葉にしてはイケナイ。