【続】酔いしれる情緒


「じゃあ10チャンネルだ」



そう言われ、変えてみる。



「あ、ほんとだ。
どのグループのことなんだろう…」

「いっぱいいるから分かんないね」



スペシャル番組なのか、やけに沢山の人達が映っていて、慎二くんの推しグループがどれなのか分からない。



「確か女の子5人組の……あ。」



探している最中にパッとCMに切り替わってしまった。



「あとでちゃんと紹介されるだろうからそんなにショック受けなくても」

「受けてないし…」



春は私の姿を見てクスクスと笑う。



デートをしたあの日。


あの時は少し不穏な空気が流れていたものの、あれから何週間が経った今日まではとても平和な時間が過ぎていた。



そう、今日まで。


というか、この瞬間までは。

好きな人と過ごす幸せな時間だった。



────とあるCMが流れるまでは。



「………あ。」



そのCMを目にした時、つい、言葉を発してしまう。


だって……本屋に来たあの女の人が映っていたから。


ちらりと春の方に視線を向けるが、春は構わずご飯を食べ進めている。



(気づいてない…のかな)



別にこの人とあれから何かがあったわけじゃないけど……
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