【続】酔いしれる情緒
「………あのさ、春」
「ん?」
「春は……この人と何かあったの?」
女の勘、というのだろうか。
春はこの人と何かあったんじゃないかって。
この人が本屋に来たことを伝えた時からそんな感じがしていたんだ。
ちらりと春の視線がテレビの方に移る。
そしてそのまま視線は下を向いた。
「言いたくないって言ったら?」
「私には言えないようなことなの?」
「ううん、言える。
言えるけど、あんまりいい話じゃない。
……それでも聞きたい?」
「…………………」
迷った。
少しだけ、冷や汗もかいた。
ああ、やっぱり、何かあったんだって。
その『何か』は聞かないと分からない。
怖い。聞くのは怖い。
だけど
「……私達はもう夫婦なの。
名前の無い関係なんかじゃない。
だから…隠し事は無し。言って。」
生涯を共にしたいと思っているから
貴方の全てを知りたい。
「…………………」
春は私と目を合わせると
ゆっくり視線を逸らして小さく息を吐く。
春の綺麗な瞳が少し濁った気がした。