【続】酔いしれる情緒


春は私をベッドに乗せると、足をかけ、屈んで私の顎を掴み引き寄せる。


全てがスピーディーで乱暴に感じるけど
私に触れる手つきはひたすら優しい。



(あ……キス、される)



端正な面が目の前まで迫り、どことなく緊張感が溢れてキュッと春の服を掴む。


お互いの吐息が、熱が、交わって。


落ちてくる刺激、柔らかい感触を1度感じた。



たった数秒の行為。

ジッと無表情で私を見下ろしていたくせに、離れると妖しく微笑まれ、くらりと目眩。



「これ以上はさすがにダメだね。」

「…………………うん」

「残念だけど、我慢するよ」



春は私の頭をくしゃりと撫でた。

なんだか困ったように眉根を下げて、優しく微笑んで。



ちらりと時計に視線をあてれば、春の言ってる通り、これ以上はダメな時間。


私も仕事の準備をしないといけないし、春は下で橋本さん達を待たせている。


そう分かっているのに………



『これ以上はさすがにダメだね。』



春のその問いかけに、私はスグ返事ができなかった。



少し遅れて「うん」とは答えたものの、


本当は



(……物足りない。)



その言葉が

胸の奥にハッキリと存在している。



「仕事、頑張ろーね」

「っ、!」



チュッ。


ほんの一瞬だけど、額に軽くキスを落とされた。


春は平然とした顔を見せると私に背を向け、立ち上がる。



──そんな春に微かに手を伸ばしてしまう私。



行かないで。

そばにいて。

違う誰かに触れないで。



『今まで疎遠になってたんだから、もっと凛との時間がほしい。』



(…………私だって)



離れ難くて、離れたくなくて

仕事の時間でさえも惜しいと思ってる。


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