【続】酔いしれる情緒
「ごめん、仕事戻るね」
「あ、うん。ごめん邪魔して」
「全然。久しぶりに話せて楽しかった」
そして久しぶりに心の底から笑えた。
このまま……春の前でも笑えたら。
また、平和な時間を過ごせるのかな。
「………あのさ」
「ん?」
「仕事…そろそろ終わり?」
「うん。閉店作業したら終わり」
「じゃあ……」
「うん?」
佐藤くんは口元に軽く手を当てて、言った。
「…………外で待ってていいか?」
なんだか照れ臭そうに。
「えっ…と……」
その言葉、その顔。
この感じは……
「………ごめん。このあと用事あるから」
「あ…そっか。分かった。悪い呼び止めて」
「ううん、大丈夫。じゃあね」
「……ああ、じゃあ。」
佐藤くんの背中を目で見送り、店内からその姿がなくなってようやく息を吐く。
(あの感じは……好意、な気がする)
佐藤くんからそれを感じ取った。
そうじゃないとしたら勝手に決めつけて申し訳ないけど…
でも、もしそうだったとしたら。
既に結婚している今、あれが正しい選択だと思う。