【続】酔いしれる情緒
閉店時間になり、ドアを閉めて閉店作業を進める私。
今日は私と店主2人だけだから
作業もそれなりにあるにも関わらず、
「安藤さん。もう上がっていいよ」
「え?まだ作業終わってませんけど」
「あとはしておくから早く彼のところに行ってあげて。外は寒いだろうし。」
「はぁ…?」
店主の言っていることがよく分からないまま、私は店主に急かされて言われた通り帰る準備を。
(外は寒いだろうし、って……)
……誰か待ってる?
外で?
え、誰だろう。
店主に聞けばよかったと少し後悔するが、ハッと頭に思い浮かぶのは春の顔。
店主は私の結婚相手を知ってる。
てことは私を待つ人って──────
「春っ」
慌てて本屋を飛び出し外に出る。
店前にいるその人は
寒そうに白い息を出していて
「あ。」
私を瞳に捕らえると
ニカッと笑顔を見せた。
「おつかれ」
「え……なんで」
「ごめん。待ってた」
そう。待ってたのは春ではなく、佐藤くん。
この状況に驚きと、それから勝手に期待していただけあって気持ちが落ち込んだ。