【続】酔いしれる情緒


「指輪、付けてないんだね」



ツー、と。春の手が左手薬指を滑る。


指輪はいつも寝る前に外し、朝起きた時に付けて出勤しているけど、今日は少し寝坊しかけたこともあって付け忘れていたみたいだ。

私も左薬指に指輪がないこと、春に言われてから気づいた。



「あ…ごめん。付け忘れてた…」



料理中だったから外してた、とか。

何か適当に理由をつければよかったのにそう馬鹿正直に答えてしまった私。



いや………これでいいのかも。


そうすれば、きっと、春は───



「春?」



ギュッと強く掴まれた左手。


春の瞳は髪に隠れて見えない。



「指輪は忘れてたけど……

これは、ずっと付けてあるから」



だから怒らないで。とでも言うように、私は服で隠れていたネックレスを首元から取り出して春に見せようとした────が。



「!!」



グイッ。


左手を強く引っ張られると
私の身体は前のめりに。



「は……っ…」



口付けを交わそうと迫る春。


それに気づいた私は応えようとしてキュッと口を閉じるけど…
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