【続】酔いしれる情緒
いつもとは違う春の態度に呆気に取られた私は一瞬頭が真っ白になってしまった。
「っ、」
春はそんな私の頭を優しく撫でると
ニコリ。
笑顔を見せてから、そのまま浴室へと消えた。
春が私に偽りの笑みを見せる時は
大抵何かを隠したい時にする顔。
だけどこの時の笑顔は
偽りでも何でもない、
正真正銘春の笑顔だった。
(…………気にしすぎ、か…)
春の態度には違和感を感じた。
けど、私に見せる顔は今まで通り。
手にも頭にも
未だ残る、彼の感覚。
あの日の冷たさを微塵も感じさせないくらい
その手はあたたかくて、なんだか安心した。
……気のせい、だよね。
もう一度そう心に思って
私もリビングへと戻る。
─────バタン。
ドアの閉まる音が静かな空間に響いた。