好きよりも、キスをして
「(でも”生き甲斐”なんて言うと、きっと静之くんは”重たい・うぜぇ”の一言で終わらせるんだろうけど)」
だけど、その言葉を聞いても、きっと私は凹まないと思う。
だって、一緒に夜を過ごすようになって、少しずつ、静之くんの事を知れて、理解できているような気がするから――
と、思った時だった。
放課後。静之くんに、珍しく枝垂坂さんが話しかけた時に、静之くんの表情が曇ったのを、偶然にも見てしまう。
枝垂坂さんの声はよく通る声で、何て言ったのか、離れて立っていた私にも聞こえてしまった。
そう、確かに彼女は言ったのだ。
静之くんに、一緒に帰ろう――と。
チクンッ
「(ん?チクンって、なに?)」
自分の胸の内が、少しだけ音を出したのに気づく。だけど、その音の正体を探ろうとする前に、私は静之くんにメールを送ってしまっていた。